優秀な中間管理職が退職する理由を『ピーターの法則』で解説

「どうして、うちの会社は優秀な人材から辞めていくのだろう・・」

このような悩みを抱える経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。

人材流出の理由を給与や待遇面と考えてしまいがちですが、それ以外の理由も顕在化してきた感があります。

それは「収入が下がってもいいから転職したい」という、中間管理職の声からもわかります。

転職の本意を尋ねてみると、「この会社にいても成長できそうにない」という明確な答えが返ってくることもあります。

このような状況の原因を、書籍『ピーターの法則』で考えてみたいと思います。

『ピーターの法則』とは?

『ピーターの法則』は、ローレンス・J・ピーターによって書かれた経営学に関する本です。

この法則は、組織が成長する過程で能力のある人材が昇進し、最終的にはその人材が適任でないポジションに達するという現象を指摘しています。

会社組織では、従業員が現在の職務で成功すると、次のレベルに昇進する傾向があります。

昇進の階段を上がる従業員は、いずれは自分の能力では役割を果たせない高い職位に上り着くことになり、組織全体の効率が低下するという結果になるということです。

『ピーターの法則』という言葉を知らなくても、肌感覚としてこのような仕組みの存在を感じる従業員はいるでしょう。

人材育成の順番を「川上から」に変える

人材育成の計画を立てる際に、どの層の教育研修を重視しているでしょうか?

新人教育や中間管理職以下への教育研修だけに力を入れても、スピーディーに会社が変わることはあまりないと言えます。 


もし、『ピーターの法則』が自社に起こっていると感じられるなら、ぜひ「川上から」人材育成機会を設けることを一考してみてはいかがでしょうか。

特に、中小企業では、役員部長クラスのための学びの機会を設けていない会社は多いと感じます。

役職が上がるにつれて公式な教育機会が減り、各自の自己研鑽の努力に頼りがちになりがちです。

しかし、実際には上層部になるほど、自己研鑽の量と質に個人差が生まれ「社内の人材格差」が広がります。


そこそこ高い役職に就いた従業員の中には、「昇進=その役割に必要な能力を自分はすでに持っている」と勘違いしている人もいるようです。

そうではありませんね。

ひとつ前の職務を上手くこなせたので、新しい学びを要する新しい役割を与えられたのだと理解することも大切です。

優秀な中間管理職が退職を決める理由

では、今一度、向上心を持ち優秀に育った中間管理職が退職を決める理由をまとめてみましょう。

会社が提供する教育機会と現場の実践で実力をつけた社員ほど、学ぶ機会を得ず現状維持の上司に対して厳しい目を持ち始めます。

上司や経営層への期待が薄らぎ、「ここでは成長できない」と感じてしまうことで、転職を本格的に考え始める可能性があるというこです。

『ピーターの法則』の壁を乗り越えるには?

では、『ピーターの法則』の壁を乗り越えるにはどうすれば良いのでしょうか。

昇格したての従業員には、その役職に必要な学びの場を準備するか、求める職務結果を明らかにしてそのための自己研鑽を促すことは大切なことです。

経営者自身が学んでいるなら、経営者が主催する勉強会の開催なども良い事例だと思います。


しかし、転職を考えている優秀な中間管理職からは、次のような本音もありました。

「自分たちが社内で学んでいる基本的なマネジメント研修などに、上司も受講者として参加してほしい」

自分たちの職務に期待されている基本的な学びを上司にも一緒に受講してもらい、上司の職務の中で活かしてほしいと望んでいることもあるようです。