女性が輝く組織へ:女性ファイナンシャルプランナーが提案する「女性のための3つの人生プランニング」

日本の企業ではまだまだ女性活躍に課題があるのが現状です。

多くの組織では、女性管理職登用に向けた研修や、女性社員が長く働ける環境づくり・意識改革の施策が進められています。

しかし、その施策とは裏腹に「どうしてうちの女性社員は管理職を目指さないのか?」という新たな疑問や悩みが生じているようです。


今回は、長年ファイナンシャルプランナーとして顧客と向き合ってきた私の経験と、企業の女性活躍を応援する立場から、この問題解決の糸口を探っていきたいと思います。

女性に本当に必要なのは個としての人生プランニング

企業が女性の管理職登用を目指した時に、いの一番に取り組まれるのはキャリア研修などではないでしょうか。

しかし、この趣旨の研修のみに留まると、女性社員には企業都合の研修と捉えられてしまい、「自分のニーズとは感じない」という結果になることもあります。


男性が主体となっている社会や企業の目線で「管理職を目指すように!」と急かすのではなく、働く女性が本当に必要な情報や考える機会を提供することが大切だと私は考えます。


では、女性活躍の当事者である女性社員に本当に必要な情報や考える機会とはどのようなものでしょうか?


ここで提案するのは、ひとりの女性として自分の人生を俯瞰する「3つの人生プランニング」を考える機会です。

【3つの人生プランニング】

1:個人としての将来設計「ライフプラン」

2:仕事や身につけたいスキルの選択「キャリアプラン」

3:老後までのお金の見通し「ファイナンシャルプラン」

女性が自分自身の人生プランをしっかり考えることは、個人の成功だけでなく、組織の成長にとっても不可欠だと考えます。

女性が個人として人生プランニングを行うことで、日々の仕事の捉え方、将来の仕事や役割などを主体的に捉えることができると思われるからです。

次の章では、「3つの人生プランニング」について詳しく解説します。

3つの人生プランニングで人生・キャリア・お金について考える

女性のための「3つの人生プランニング」を考える目的を明確にしておきましょう。

歴史的にもみても経済的な男女の役割分担には、主従関係として「男性が主、女性が従」という意識(ジェンダーバイアス)が根深くあります。

(私自身、過去に行ったファイナンシャルプランニングの多くが、”家族を養う男性”を主体にしたファイナンスプラン書を作成することでした。)


女性が一個人として自分の人生プランニングについて考えることは、根深いジェンダーバイアスを超えるために必要な過程ではないかと考えます。

1:個人としての将来設計「ライフプラン」

「ライフプラン」では、まず初めに将来のライフイベントを考えます。

一般的なライフイベントには、持ち家の購入・子どもの進学就職・旅行イベント・退職時期の想定・起業希望などが挙げられます。


独身の女性の場合、今後のライフイベントを明確に描くのは難しく感じるかもしれませんが、何歳で何をしたいかなど、まずは気軽に考えてみればよいでしょう。

例えば、将来やりたい事・希望の家族形態・趣味の実現・学び直し・身につけたいスキル・職業形態・仕事の引退・老後の過ごし方、など自由に発想してもらいます。

「今まで将来のことを考える機会がまったくなかったことに気が付いた」
「人生のタイムラインを眺めてみるだけでも、日々の過ごし方を考えるきっかけになった」

簡単なライフプランを一度考えてみただけでも、このような感想があります。

女性が自分自身を主体としてライフプランを考えるということは、ジェンダーバイアスを超えて思考する、現状の仕事について将来展望を考える機会になり得ます。

2:仕事や身につけたいスキルの選択「キャリアプラン」

「キャリアプラン」では、次のようなプロセスでキャリアの棚卸や展望、自己分析を進めていくと良いでしょう。


【1:スキルの棚卸】

これまでの職業経験や身につけたスキルを振り返り、自身が保有しているスキルセットを確認・評価します。

誰にでも興味や趣味から自発的に身につけたスキルと、業務等の必要性から身につけたスキルがあるのではないでしょうか。

両方から得たスキルを統合することで、将来の可能性を自覚したり、自分自身を新たに発見することができそうです。


【2:リーダーシップの自己分析】

特に女性の場合は、上位の役職に就くにあたり「自信がない」という心理的なハードルが多く見られます。

キャリアの選択時によくある心理的ハードルを下げるために「リーダーシップスタイルの自己分析」をお勧めします。

リーダーシップの在り様は、これまでの指示中心のステレオタイプ型から、今後はより柔軟なリーダーシップが求められる端境期にあるといえます。

女性が自分自身のリーダーシップスタイルを知り、そのスタイルを活かせる役割があると分かれば、チャレンジングな役職でも活躍できるという自信につながるでしょう。


【3:キャリア目標の設定と行動計画の策定】

最終ステップでは、自己分析を基に具体的なキャリア目標を設定し、それを達成するための行動計画を立てます。

先ほどの、ライフプランで自身の将来について思いを描いたところに、キャリアプランを重ねていくことで、より具体的な将来の目標を持つことができるでしょう。

3:老後までのお金の見通し「ファイナンシャルプラン」

女性が自分の人生や仕事について考える時に、一個人としてのファイナンスプランを立てることが、これからの時代は必要になると言えます。

独身世帯や共働き世帯が増えたこともあり、女性も自分個人のファイナンスプランを持っておくことがキャリア形成を考えるためにも役立ちます。

設定したキャリア目標から、どのように収入を得るかを計画します。

そして、自分の価値観と向き合いながら、どのようなモノ・コトに支出をするのか、自己投資はどのように行うのかを、老後までのタイムスパンでざっくりとファイナンシャルプランを考えてみると良いでしょう。


人生全体を大きく俯瞰できたら、現在位置に立ち戻り、今からどのような職業・役割・時間の使い方をするのが理想的かを再考してみます。

まとめ

ライフプラン・キャリアプラン・ファイナンシャルプランを組み合わせて将来の展望を考える機会は、特に女性が経済的自立を考え、職場でのリーダーシップを実現するための基盤を築きます。

女性の管理職登用などを目的にした研修やセミナーでは、単にキャリアプランへの言及に留まることなく、長期的な人生設計やファイナンスプランについても俯瞰する機会を設けてみることをお勧めします。

また、このような研修機会は女性だけでなく、男性従業員にも十分活用できるものです。

ひとりひとりの潜在能力を引き出し職場の活性化に寄与することでしょう。