なぜ、みんなの前で部下を叱ってはいけないのか? 職場へのネガティブな影響を脳科学で解説

部下への不満が抑えきれず、ついみんなの前で部下を叱責した経験がある人は多いのではないでしょうか?


管理職の部下指導法として、

「職場のみんなの前で、ひとりを叱るのはやめましょう」

と、よく耳にしますが、なぜ人前での叱責は避けるべきなのでしょうか?


実は、人前で叱られた本人への影響だけでなく、周囲の人々にも不安やストレスが広がるからです。

これは、脳科学の領域、「感情の伝染」と「ミラーニューロン」のしくみからも理解できます。


今回は、脳科学に基づいた感情の伝染とシンクロする脳の仕組みを解説し、上司が建設的なフィードバックを行う環境づくりについても具体的なアドバイスをお届けします。

叱責がもたらす、本人以外の他者への影響

誰かが叱られる場面を目撃すると、不思議と自分も不安を感じたり、ストレスを覚えたりすることがありませんか?

これは「感情の伝染」と呼ばれる現象で、脳科学的にはミラーニューロンが大きな役割を果たしています。

ミラーニューロンとは、他者の行動や感情を目にしたとき、自分の脳も同じように反応する神経細胞のことです。


例えば、誰かが笑えば、つられて笑ってしまうことがありますよね。

これは脳がその人の感情を「シンクロ」させているためです。


もし、職場の中でネガティブな感情が「シンクロ」されていくと、職場の士気や生産性が大きく低下することがあります。

特に、上司がネガティブな感情を発信源としている場合、その影響は強力です。



感情が伝染しやすい職場環境では、個々のパフォーマンスにも悪影響を与えるため、上司は自身の感情が職場にどのような波を起こすのかを意識して行動する必要があります。

感情の伝染を防ぐマネジメント—建設的なフィードバックのために

感情の伝染やシンクロする脳の特性を理解した上で、上司として重要なのは、いかにしてネガティブな感情が職場に広がるのを防ぐかです。

その鍵となるのが、フィードバックを与える際の環境づくりです。

まず、叱責やフィードバックは一対一の場で行うことが基本です。


これは、叱られる本人にとっても心理的に安心できる環境であり、周囲にネガティブな感情が伝染することを防ぐための有効な方法です。



また、建設的なフィードバックを心がけましょう。

叱責は感情的になるのではなく、具体的な改善策や次に期待する行動を示すことで、本人の成長を促し、前向きな結果を生むことができます。

感情的なフィードバックではなく、冷静かつ明確に事実を伝え、部下がそれを学びとして活用できるように導くことが求められます。

さらに、上司自身が感情の管理を徹底することも大切です。

感情は周囲に伝わりやすいため、リーダーが冷静でいることで、職場全体が安定した状態を保つことができます。

感情が高ぶるときは、時間を置いて冷静になってからフィードバックを行うなど、自身の感情をコントロールする技術もマネジメントの一環として重要です。

感情の伝染を理解し、職場をポジティブに変える

「なぜ、みんなの前で部下を叱ってはいけないか?」

について脳科学から説明をしました。

ミラーニューロンによる感情のシンクロは、ストレスや不安を広げ、職場の士気や生産性を低下させる要因となることをご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、適切なフィードバック環境を整えることで、これらのネガティブな影響を防ぎ、建設的な結果を得ることは十分に可能です。

そして、この「感情の伝染」というメカニズムが分かれば、これをプラスに転じることができます。

というのも、ポジティブな感情も同じように職場に広がるため、上司が前向きで冷静な態度を示すことで、職場全体を活気づけ、チームのパフォーマンスを向上させることができると言えます。



上司が感情の伝染力を意識して管理すれば、職場に良い影響を与え、健全で生産的な環境を作ることができるのです。


感情の伝染力を理解し、積極的にチームをポジティブな方向へ導くマネジメントが、健全な職場作りに不可欠です。